制御工学 非線形制御

H. 非線形制御とは

実際のプラントは多くが非線形である。 例:摩擦、サチュレーション、デッドゾーン、非線形ばね、化学反応、流体、ロボットなど。

古典制御(線形制御)では扱いきれないため、 非線形性を明示的に考慮した理論が必要となる。

H1. 非線形システムの表現

(1) 一般的な形

\[ \dot{x} = f(x,u),\qquad y = h(x,u) \] f, h は非線形関数。

(2) 線形化(動作点周り)

非線形システムを点 \((x_0,u_0)\) の周りでテイラー展開すると

\[ \dot{x} \approx A\Delta x + B\Delta u \] \[ y \approx C\Delta x + D\Delta u \] これにより古典制御が適用可能になる。

(3) 線形制御の限界

H2. リヤプノフ安定性理論

(1) リヤプノフ関数

非線形システムの安定性を調べるために、 スカラー関数 \(V(x)\)(エネルギーのようなもの)を使う:

(2) リヤプノフの安定定理

\[ \dot{V}(x) < 0 \] を満たせば、原点は漸近安定。

(3) 自律系の安定

入力がない系 \[ \dot{x}=f(x) \] において平衡点の安定性を調べるのに使う。

H3. フィードバック線形化

非線形システムの入力変換を使って システム全体を線形システムに変換する手法

(1) SISO の例

\[ \dot{x} = f(x) + g(x)u,\qquad y=h(x) \]

器用に u を選ぶことで \[ y^{(r)} = v \] のように「線形で簡単な形」にできる。

(2) 適用例

H4. スライディングモード制御(SMC)

外乱やモデル誤差への極めて強いロバスト性を持つ非線形制御方式。

(1) スライディング面 s(x)

\[ s(x)=0 \] を目標とする超平面を定義し、軌道をそこに引き込む。

(2) リーチング条件

\[ s(x)\dot{s}(x) < 0 \] となるように u を選ぶ。

(3) チャタリング問題

実機では切替の高速スイッチングが生じる。 → 対策:境界層法(サチュレーション関数)など。

H5. バックステッピング(Backstepping)

非線形システムを「階層的な構造」に分け、 一段ずつ安定化していく設計法。 特に低次元ロボティクス系などで多用される。

(1) Strict-feedback 形式

\[ \dot{x}_1 = f_1(x_1) + g_1(x_1) x_2 \] \[ \dot{x}_2 = f_2(x_2) + g_2(x_2) u \]

(2) 目標

まず \(x_1\) を安定化する目標値 \(x_2^\*\) を作り、 次に \(x_2\) を安定化する u を設計する。

(3) リヤプノフと相性が良い

逐次的にリヤプノフ関数を構築できるため、 設計が体系的に進む。

H6. 非線形オブザーバ

(1) 拡張カルマンフィルタ(EKF)

非線形関数を一次近似して線形カルマンフィルタを適用する。

(2) アンサンブルカルマンフィルタ(EnKF)

線形化を使わず、サンプル集合で期待値を近似する手法。 非線形性が強い場合でも安定しやすい。

(3) スライディングモードオブザーバ

外乱推定や不確かさ評価に強い非線形オブザーバ。

H7. 非線形制御の実務的注意点

非線形制御は「本当に必要な時に強い」制御方式であり、 状態空間法・最適制御・ロバスト制御の上位概念として理解すると分かりやすい。

参考URL

 

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