ロバスト制御とは、モデル誤差や外乱があっても「壊れにくい」制御系を設計するための体系である。 「モデル通りならうまく動く」だけでなく、 パラメータがずれても・外乱が変動しても安定で性能が保たれることを重視する。
同じ装置でもロットや温度・経年でパラメータが変動する。 プラント \(P(s)\) の名目モデル \(P_0(s)\) のみを前提に設計すると、 実機では発振したり性能が著しく低下する場合がある。
「許容されるすべての不確かさ \(\Delta\) に対して閉ループ系が安定である」こと。 H∞制御や μ解析では、これを数学的に評価・保証する。
一巡伝達関数 \(L(s)=P(s)C(s)\)(プラント P とコントローラ C の積)に対して、
感度関数: \[ S(s) = \frac{1}{1+L(s)} \]
相補感度関数: \[ T(s) = \frac{L(s)}{1+L(s)} \]
「どの周波数帯で性能を重視するか」を、重み関数 \(W_S(s), W_T(s)\) で表す:
\[ \bigl\| W_S(s) S(s) \bigr\|_\infty < 1,\quad \bigl\| W_T(s) T(s) \bigr\|_\infty < 1 \]
ここで \(\|\cdot\|_\infty\) は H∞ ノルム(後述)。
伝達行列 \(G(s)\) に対して、H∞ ノルムは
\[ \|G\|_\infty = \sup_{\omega\in\mathbb{R}} \bar{\sigma}\bigl(G(j\omega)\bigr) \]
ここで \(\bar{\sigma}(\cdot)\) は最大特異値。 SISO 系では \(|G(j\omega)|\) に一致する。
閉ループ系のある伝達関数 \(T_{zw}(s)\)(外乱 w → 性能出力 z)について
\[ \|T_{zw}\|_\infty < \gamma \]
を満たすコントローラを求めるのが H∞ 制御の基本問題。
プラント \(P(s)\)、重み付け、外乱入力 w、制御入力 u、 性能出力 z、観測出力 y をまとめて「一般化プラント」\(P\) を構成する:
\[ \begin{bmatrix} \dot{x} \\ z \\ y \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} A & B_w & B_u \\ C_z & D_{zw} & D_{zu} \\ C_y & D_{yw} & D_{yu} \end{bmatrix} \begin{bmatrix} x \\ w \\ u \end{bmatrix} \]
出力 y を用いて u を決定するフィードバックを設計し、 ループを閉じたときの \(T_{zw}\) の H∞ ノルムを最小化する。
hinfsyn, mixsyn などで実装可能H∞ 制御は「全ての不確かさを一つの塊」として扱うが、 実際の不確かさはパラメータごとに構造をもっている。 μ解析(構造化特異値)は、この構造を考慮したロバスト解析の手法。
「不確かさブロック」と「名目ループ」とを結合したブロック線図を考え、 不確かさの大きさ(ノルム)が 1 のときに 閉ループが不安定になるかどうかを評価する。
PID や LQR だけでは足りない「モデルずれに強い制御」を求める場合、 ロバスト制御の考え方が非常に有効になる。