制御工学2

むだ時間のラプラス変換

制御対象や信号伝送では,入力が変化してから出力に反映されるまでに 一定時間だけ遅れが生じることがある。この遅れをむだ時間 \(T\) と呼ぶ。

時間領域で関数 \(f(t)\) を右に \(T\) だけ平行移動(すなわち \(T\) だけ遅延)した信号は \(f(t-T)\) と書けるが,片側ラプラス変換の定義域 \(t\ge 0\) を考慮すると, \(t <T\) の範囲では信号は現れない。そこで単位ステップ関数\(u(t)\)を用いて
\[ f(t-T)u(t-T) \]
と表すのが自然である。

この関数をラプラス変換すると
\[ \mathcal{L}\{f(t-T)u(t-T)\} =\int_{0}^{\infty} f(t-T)u(t-T)e^{-st}\,dt \]

ここで \(u(t-T)=0\ (t<T),\ u(t-T)=1\ (t\ge T)\) であるため,積分区間は
\[ \int_{0}^{\infty} f(t-T)u(t-T)e^{-st}\,dt = \int_{T}^{\infty} (   ①   )  \]

変数変換 \(\tau=t-T\)(すなわち \(t=\tau+T\))を行うと
\[ \int_{T}^{\infty} (   ①   ) =\int_{0}^{\infty} f(\tau)e^{-s(\tau+T)}\,d\tau \]

指数関数を分離すると
\[ \int_{0}^{\infty} f(\tau)e^{-s(\tau+T)}\,d\tau =( ② )\int_{0}^{\infty} f(\tau)e^{-s\tau}\,d\tau \]

右辺の積分は \(F(s)=\mathcal{L}\{f(t)\}\) であるから, 結局
\[ \mathcal{L}\{f(t-T)u(t-T)\}=( ② )F(s) \qquad (T>0) \]

すなわち,時間領域でのむだ時間 \(T\) はラプラス領域では因子 \[ ( ② ) \] として表される。

むだ時間のラプラス変換

制御対象や信号伝送では,入力が変化してから出力に反映されるまでに 一定時間だけ遅れが生じることがある。この遅れをむだ時間 \(T\) と呼ぶ。

時間領域で関数 \(f(t)\) を右に \(T\) だけ平行移動(すなわち \(T\) だけ遅延)した信号は \(f(t-T)\) と書けるが,片側ラプラス変換の定義域 \(t\ge 0\) を考慮すると, \(t <T\) の範囲では信号は現れない。そこで単位ステップ関数\(u(t)\)を用いて
\[ f(t-T)u(t-T) \]
と表すのが自然である。

この関数をラプラス変換すると
\[ \mathcal{L}\{f(t-T)u(t-T)\} =\int_{0}^{\infty} f(t-T)u(t-T)e^{-st}\,dt \]

ここで \(u(t-T)=0\ (t<T),\ u(t-T)=1\ (t\ge T)\) であるため,積分区間は
\[ \int_{0}^{\infty} f(t-T)u(t-T)e^{-st}\,dt = \int_{T}^{\infty} ( ① f(t-T)e^{-st}\,dt )  \]

変数変換 \(\tau=t-T\)(すなわち \(t=\tau+T\))を行うと
\[ \int_{T}^{\infty} (① f(t-T)e^{-st}\,dt) =\int_{0}^{\infty} f(\tau)e^{-s(\tau+T)}\,d\tau \]

指数関数を分離すると
\[ \int_{0}^{\infty} f(\tau)e^{-s(\tau+T)}\,d\tau =( ②e^{-sT} )\int_{0}^{\infty} f(\tau)e^{-s\tau}\,d\tau \]

右辺の積分は \(F(s)=\mathcal{L}\{f(t)\}\) であるから, 結局
\[ \mathcal{L}\{f(t-T)u(t-T)\}=( ②e^{-sT} )F(s) \qquad (T>0) \]

すなわち,時間領域でのむだ時間 \(T\) はラプラス領域では因子 \[ ( ②e^{-sT} ) \] として表される。

パデ近似(1次)

むだ時間要素 \(e^{-Ls}\) は指数関数であり,そのままでは有理関数でないため, ボード線図やナイキスト線図による解析が行いにくい。 そこで原点近傍での振る舞いが一致するように,有理関数で近似する方法として パデ近似を用いる。

指数関数のマクローリン展開は
\[ e^{-Ls}=1-Ls+\frac{L^2}{2}s^2-\frac{L^3}{6}s^3+\cdots \]

また次の基本展開式を用いる:
\[ (1+x)^{-1}=1-x+x^2-x^3+\cdots \qquad (|x|<1) \]

1次のパデ近似では,次の形の有理関数を仮定する:
\[ e^{-Ls}\approx \frac{1+as}{1+bs} \]

分母を \((1+bs)^{-1}\) として展開すると
\[ \frac{1+as}{1+bs}=(1+as)(1+bs)^{-1} =(1+as)\left(     ①      \right) \]

2次の項まで整理すると
\[ \frac{1+as}{1+bs} =1+\left(   ②   \right)s+ \left(    ③    \right)s^2+\cdots \]

これを指数関数の展開 \[ e^{-Ls}=1-Ls+\frac{L^2}{2}s^2+\cdots \] と係数比較すると,

\[ a-b=\left( ④ \right), \qquad b^2-ab=\left( ⑤ \right) \]

よって
\[ a=\left( ⑥ \right), \qquad b=\left( ⑦ \right) \]

したがって,1次パデ近似は
\[ e^{-Ls}\approx \left( ⑧ \right) \]

パデ近似(1次)

むだ時間要素 \(e^{-Ls}\) は指数関数であり,そのままでは有理関数でないため, ボード線図やナイキスト線図による解析が行いにくい。 そこで原点近傍での振る舞いが一致するように,有理関数で近似する方法として パデ近似を用いる。

指数関数のマクローリン展開は
\[ e^{-Ls}=1-Ls+\frac{L^2}{2}s^2-\frac{L^3}{6}s^3+\cdots \]

また次の基本展開式を用いる:
\[ (1+x)^{-1}=1-x+x^2-x^3+\cdots \qquad (|x|<1) \]

1次のパデ近似では,次の形の有理関数を仮定する:
\[ e^{-Ls}\approx \frac{1+as}{1+bs} \]

分母を \((1+bs)^{-1}\) として展開すると
\[ \frac{1+as}{1+bs}=(1+as)(1+bs)^{-1} =(1+as)\left( ① 1-bs+b^2s^2-\cdots \right) \]

2次の項まで整理すると
\[ \frac{1+as}{1+bs} =1+\left( ②a-b \right)s+ \left( ③b^2-ab \right)s^2+\cdots \]

これを指数関数の展開 \[ e^{-Ls}=1-Ls+\frac{L^2}{2}s^2+\cdots \] と係数比較すると,

\[ a-b=\left( ④-L \right), \qquad b^2-ab=\left( ⑤\frac{L^2}{2} \right) \]

よって
\[ a=\left( ⑥ -\frac{L}{2} \right), \qquad b=\left( ⑦\frac{L}{2} \right) \]

したがって,1次パデ近似は
\[ e^{-Ls}\approx \left( ⑧\frac{1-\frac{L}{2}s}{1+\frac{L}{2}s} \right) \]

パデ近似(2次)の導出

2次パデ近似では,むだ時間要素 \(e^{-Ls}\) を次の有理関数で近似する:
\[ e^{-Ls}\approx \frac{1+a_1s+a_2s^2}{1+b_1s+b_2s^2} \]

指数関数のマクローリン展開(4次まで):
\[ e^{-Ls}=1-Ls+\frac{L^2}{2}s^2-\frac{L^3}{6}s^3+\frac{L^4}{24}s^4+\cdots \]

分母の逆数を \(X=b_1s+b_2s^2\) とおいて \((1+X)^{-1}=1-X+X^2-X^3+\cdots\) を用いる。 3次の項まで必要なので,
\[ (1+b_1s+b_2s^2)^{-1} =1-( ① )+( ② )-( ③ )+\cdots \]

ここで \[ X=b_1s+b_2s^2,\quad X^2=b_1^2s^2+2b_1b_2s^3+\cdots,\quad X^3=b_1^3s^3+\cdots \] より,3次の項まで整理すると
\[ (1+b_1s+b_2s^2)^{-1} =1- b_1s+( ④ )s^2+( ⑤ )s^3+\cdots \]

したがって
\[ \frac{1+a_1s+a_2s^2}{1+b_1s+b_2s^2} =(1+a_1s+a_2s^2)\left[1- b_1s+( ④ )s^2+( ⑤ )s^3+\cdots\right] \]

これを 3次の項まで掛け算して
\[ \frac{1+a_1s+a_2s^2}{1+b_1s+b_2s^2} =1+( ⑥ )s+( ⑦ )s^2+( ⑧ )s^3+\cdots \]

係数比較 \[ 1+( ⑥ )s+( ⑦ )s^2+( ⑧ )s^3+\cdots = 1-Ls+\frac{L^2}{2}s^2-\frac{L^3}{6}s^3+\cdots \] より
\[ ( ⑥ )=-L,\quad ( ⑦ )=\frac{L^2}{2},\quad ( ⑧ )=-\frac{L^3}{6} \]

この条件を満たす係数は
\[ a_1=( ⑨ ), \quad a_2=( ⑩ ), \quad b_1=( ⑪ ), \quad b_2=( ⑫ ) \]

よって 2次パデ近似は
\[ e^{-Ls}\approx( ⑬ ) \]

パデ近似(2次)の導出

2次パデ近似では,むだ時間要素 \(e^{-Ls}\) を次の有理関数で近似する:
\[ e^{-Ls}\approx \frac{1+a_1s+a_2s^2}{1+b_1s+b_2s^2} \]

指数関数のマクローリン展開(4次まで):
\[ e^{-Ls}=1-Ls+\frac{L^2}{2}s^2-\frac{L^3}{6}s^3+\frac{L^4}{24}s^4+\cdots \]

分母の逆数を \(X=b_1s+b_2s^2\) とおいて \((1+X)^{-1}=1-X+X^2-X^3+\cdots\) を用いる。 3次の項まで必要なので,
\[ (1+b_1s+b_2s^2)^{-1} =1-( ① X )+( ② X^2 )-( ③ X^3 )+\cdots \]

ここで \[ X=b_1s+b_2s^2,\quad X^2=b_1^2s^2+2b_1b_2s^3+\cdots,\quad X^3=b_1^3s^3+\cdots \] より,3次の項まで整理すると
\[ (1+b_1s+b_2s^2)^{-1} =1- b_1s+( ④ (b_1^2-b_2) )s^2+( ⑤ (2b_1b_2-b_1^3) )s^3+\cdots \]

したがって
\[ \frac{1+a_1s+a_2s^2}{1+b_1s+b_2s^2} =(1+a_1s+a_2s^2)\left[1- b_1s+( ④ (b_1^2-b_2) )s^2+( ⑤ (2b_1b_2-b_1^3) )s^3+\cdots\right] \]

これを 3次の項まで掛け算して
\[ \frac{1+a_1s+a_2s^2}{1+b_1s+b_2s^2} =1+( ⑥ (a_1-b_1) )s+( ⑦ (a_2-a_1b_1+b_1^2-b_2) )s^2 \] \[ \qquad\qquad\qquad\qquad +( ⑧ (a_1(b_1^2-b_2)-a_2b_1+2b_1b_2-b_1^3) )s^3+\cdots \]

係数比較 \[ 1+( ⑥ )s+( ⑦ )s^2+( ⑧ )s^3+\cdots = 1-Ls+\frac{L^2}{2}s^2-\frac{L^3}{6}s^3+\cdots \] より
\[ ( ⑥ )=-L,\quad ( ⑦ )=\frac{L^2}{2},\quad ( ⑧ )=-\frac{L^3}{6} \]

この条件を満たす係数は
\[ a_1=( ⑨ -\frac{L}{2} ), \quad a_2=( ⑩ \frac{L^2}{12} ), \quad b_1=( ⑪ \frac{L}{2} ), \quad b_2=( ⑫ \frac{L^2}{12} ) \]

よって 2次パデ近似は
\[ e^{-Ls}\approx( ⑬ \frac{1-\frac{L}{2}s+\frac{L^2}{12}s^2}{1+\frac{L}{2}s+\frac{L^2}{12}s^2} ) \]

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