トランジスタは「電流(あるいは電圧)で電流を制御する素子」として、 小さな入力信号を大きな出力信号に変換する増幅器の基本素子である。
この章では、動作点(バイアス)+小信号等価回路を用いた 代表的な増幅回路を整理する。
ベース電圧を \[ V_B = \frac{R_2}{R_1 + R_2} V_{CC} \] のように分圧で与え、エミッタ抵抗 \(R_E\) で安定化する。
出力電圧の静的な動作点は \[ V_{CE} = V_C - V_E \] で評価し、能動領域(飽和でもカットオフでもない領域)に入るよう設計する。
動作点 \(I_C\) における小信号パラメータ: \[ g_m = \frac{I_C}{V_T}, \quad r_\pi = \frac{\beta}{g_m} \] (\(V_T \approx 26\,\mathrm{mV}\) at 室温)
エミッタに抵抗 \(R_E\) があり、交流的にも有効な場合の近似: \[ A_v \approx -\frac{g_m R_C}{1 + g_m R_E} \] (マイナスは位相反転を意味する)
\(R_E\) に並列にバイパスコンデンサ \(C_E\) をつけると、 交流的にはエミッタがほぼ GND となり、 利得は \[ A_v \approx -g_m R_C \] と大きくなる。ただし、低周波では \(C_E\) のインピーダンスが大きくなり、 利得が低下する(ハイパス特性)。
BJT のエミッタ接地に対応する回路。
ソースに抵抗 \(R_S\) を入れ、ドレインに負荷抵抗 \(R_D\) を接続。
ドレイン電流は \[ I_D \approx \frac{1}{2}k_n (V_{GS}-V_{th})^2 \] で決まる(理想式)。 実際には ID–VGS 特性から動作点を決める。
MOSFET の小信号トランスコンダクタンス: \[ g_m = \frac{\partial I_D}{\partial V_{GS}} \] 飽和領域では \[ g_m \approx \frac{2 I_D}{V_{GS}-V_{th}} \]
\[ A_v \approx -\frac{g_m R_D}{1 + g_m R_S} \]
ゲートには基本的に直流電流が流れないため、 入力インピーダンスが非常に高い。センサの信号入力段に適する。
これらが RC ローパスを形成し、高周波で利得が低下する。
単一極近似で増幅器の利得 \(|A_v|\) と帯域幅 \(f_{\text{BW}}\) の積はほぼ一定: \[ |A_v| \cdot f_{\text{BW}} \approx \text{一定} \] 高利得を取ると帯域が狭くなり、広帯域にすると利得が小さくなる。
BJT や FET を直列に接続して、 ミラー効果(寄生容量が見かけ上増大する現象)を抑制し、 高周波特性を改善する手法。
エミッタ抵抗 \(R_E\) を入れることで 温度変化による電流増加を抑え、バイアスを安定化する: \[ I_E \approx \frac{V_B - V_{BE}}{R_E} \]
\(V_{th}\) も温度で変化し、ID–VGS 特性が動くため、 バイアス回路である程度のマージンと負帰還を入れる。
電子回路の教育では、まずトランジスタ単体の増幅回路で 「バイアス+小信号モデル+利得・インピーダンス」の考え方を学び、 その上でオペアンプ回路に進むのが一般的である。