電子回路 負帰還

N. 負帰還(Negative Feedback)

負帰還(Negative Feedback)は、電子回路の安定化・高精度化・線形化のための 最重要コンセプトである。特にオペアンプ回路や増幅器設計において不可欠。

本章では:

N1. フィードバック増幅器の基本構造

(1) 基本ブロック図

入力信号 \(x\)、出力 \(y\)、増幅器の利得 \(A\)、フィードバック係数 \(\beta\) とすると、

入力側: \[ x_{\mathrm{e}} = x - \beta y \]

増幅器: \[ y = A x_{\mathrm{e}} = A(x - \beta y) \]

(2) 閉ループ利得

上式を変形すると、 \[ y(1 + A\beta) = A x \] よって閉ループ利得 \(A_f\) は \[ A_f = \frac{y}{x} = \frac{A}{1 + A\beta} \]

(3) ループ利得

\[ L = A\beta \] をループ利得(Loop Gain)という。 これが大きいとき、 \[ A_f \approx \frac{1}{\beta} \] となり、元の増幅器の A にほとんど依存しない

N2. 負帰還の 4 大効果

(1) 利得の安定化・ばらつき低減

開ループ利得 \(A\) に誤差があっても、 \[ A_f = \frac{A}{1 + A\beta} \] であるため、\(A\beta \gg 1\) なら \[ A_f \approx \frac{1}{\beta} \] となり、回路定数(抵抗比など)で精度が決まる。

(2) 帯域の拡大

一般に、負帰還をかけると

ことが多い。 利得帯域積 GBW がほぼ一定とみなせるオペアンプでは、 \[ A_f を下げる \Rightarrow 帯域が広がる \]

(3) 歪み・ノイズの低減

非線形・ノイズを含んだ増幅器でも、負帰還により 出力誤差が再び入力に戻されて補正されるため、 歪み率の低減・ノイズの抑圧が期待できる。

(4) 入出力インピーダンスの制御

N3. フィードバックの分類

一般に、フィードバックは「何を戻すか」と「どう合成するか」で 4 種類に分類される:

(1) 電圧帰還か電流帰還か

(2) 直列か並列か

(3) 4 つの代表形

それぞれで、入力・出力インピーダンスへの影響が異なる。

N4. オペアンプ回路における負帰還の具体例

(1) 反転増幅器

反転増幅器: \[ A_f = -\frac{R_f}{R_1} \] このとき、オペアンプの開ループ利得 \(A\) が十分大きければ、 利得はほぼ抵抗比で決まる。

(2) 非反転増幅器

非反転増幅器: \[ A_f = 1 + \frac{R_f}{R_1} \] これも電圧シリーズ帰還の代表例である。

(3) 電圧フォロワ(バッファ)

出力をそのまま負帰還(ユニティゲイン・フィードバック)することで、 入力インピーダンス無限大・出力インピーダンスほぼ 0 の理想バッファが実現できる。

N5. ループ利得と安定性(Bode 線図)

(1) オープンループ応答とループ利得

フィードバック系の安定性は、一般にループ利得 \[ L(j\omega) = A(j\omega)\beta(j\omega) \] のボード線図で評価する。

(2) ゲイン交点周波数と位相余裕

通常、位相余裕が \[ PM \gtrsim 45^\circ \] 程度あれば、オーバーシュートをある程度抑えた安定な応答となる。

(3) ゲイン余裕

\(\angle L(j\omega) = -180^\circ\) となる周波数でのゲインから、 どれだけゲインを上げても安定かを評価する量。

N6. 負帰還と過渡応答

(1) 2 次系の応答との類似

多くのフィードバック系は、帯域付近で 2 次系に類似した応答を示す: \[ G(s) = \frac{\omega_n^2}{s^2 + 2\zeta\omega_n s + \omega_n^2} \] ここで \(\zeta\) は減衰係数。

(2) 減衰係数とオーバーシュート

位相余裕が小さすぎると、\(\zeta\) が小さくなり、 ステップ応答で振動やリンギングが出る。

N7. 帰還量設計の実務的ポイント

N8. 負帰還の限界と注意点

負帰還は万能ではないが非常に強力な道具であり、 「ループ利得」「位相余裕」「実装(配線・補償)」をセットで考えることが重要である。

参考URL

 

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