センサなどのアナログ信号をデジタル化する「ADC」と、 デジタル情報をアナログ信号に戻す「DAC」は、 現代の電子機器の根幹を支える基本ブロックである。
本章では次を扱う:
標本化定理(ナイキスト定理): \[ f_s \ge 2 f_{\text{max}} \] これを満たさないと折り返し(エイリアシング)が発生。
アナログ値を有限ビットで表すための丸め操作。量子化ステップ: \[ \Delta = \frac{V_{\text{FS}}}{2^N} \] 量子化誤差(量子化雑音)は \[ e_q \in \left[-\frac{\Delta}{2},\,\frac{\Delta}{2}\right] \]
理想 N-bit ADC の SNR: \[ SNR \approx 6.02N + 1.76\ \mathrm{dB} \]
MSB に大きな電流が流れる構成で、設計が難しい(精密抵抗必要)。
抵抗値は R と 2R のみでよい。実装しやすい。 \[ V_o = \left(\frac{b_{N-1}}{2} + \frac{b_{N-2}}{4} + \cdots + \frac{b_0}{2^N}\right) V_{\text{ref}} \]
高速 DAC(RF, 通信)で多用される構成。
comparator を \(2^N - 1\) 個並べる方式。非常に高速だが回路規模が巨大。
現代マイコンの標準方式。 \[ N\text{回の比較で N-bit を決定} \] 低消費電力・中高速。
各段で部分的にデジタル化し、後段に誤差補償を任せる。 高速(数十~数百 MHz サンプル)で通信用途に多い。
低周波の高分解能測定に最適(ロードセル、温度計、オーディオ ADC など)。
ΔΣ変調は、
オーバーサンプリング比(OSR)を上げると \[ SNR \propto OSR^{2L+1} \] (L = モジュレータ次数)
これは SAR や flash では得られない大きな利点。
量子化雑音 \(e[n]\) に対する NTF は \[ NTF(z) = 1 - z^{-1} \] これは高域通過特性となる:
1次 ΔΣ の積分器をもう 1 段追加した構成。
2つの積分器を直列に入れることで、雑音シェーピングが二乗になる。
2 次 ΔΣ の NTF は \[ NTF(z) = (1 - z^{-1})^2 \] 展開すると \[ NTF(z) = 1 - 2z^{-1} + z^{-2} \]
ロー周波数で雑音密度は \[ |NTF(e^{j\omega})|^2 \approx \omega^4 \] となり、雑音が劇的に小さくなる。
つまり、1次の ΔΣ より 20 dB/dec 分だけ雑音がさらに減る。
一般に L 次 ΔΣ の場合 \[ SNR \propto OSR^{2L+1} \] L = 2 を代入すると \[ SNR \propto OSR^{5} \] OSR を 2 倍にすると SNR が約 15 dB 改善する。
2次以上の ΔΣ モジュレータは、 帯域外雑音が巨大になるため「ループが不安定化」する可能性がある。
そのため、実用 ADC では:
が必要になる。
ΔΣ モジュレータの 1bit 出力はノイズだらけなので、 以下のフィルタで帯域を絞って高精度化する:
結果として、高精度 ADC(20〜24 bit クラス)が実現される。
| 方式 | 特徴 | 用途 |
|---|---|---|
| ΔΣ | 高精度・低周波向け | ロードセル、温度、音声、計測器 |
| SAR | 中速・低消費電力 | マイコン内蔵 ADC、センサ測定 |
| Pipeline | 高速・中精度 | 通信(RF)、画像処理、レーダー |