電子回路 センサ工学

Q. センサ工学(電子回路編)

センサは「物理量・化学量・生体量」を電気信号に変換する素子であり、 電子回路の入り口となる重要なブロックである。 本章では、電子回路の観点から センサの種類・特性・インターフェース回路を整理する。

本章の範囲:

Q1. センサ・トランスデューサの基本モデル

(1) センサとは

センサ(Sensor)は、物理量 \(X\) (温度・圧力・変位・加速度・光・磁場・ガス濃度など)を 電気量(電圧・電流・抵抗・容量・周波数など)に変換する素子である。

(2) トランスデューサとしてのモデル

多くのセンサは近似的に \[ y = S X + y_0 \] と表せる(一次近似)。

(3) センサ+AFE+ADC の位置づけ

本章では主に「センサ+AFE(アナログ前段)」に焦点を当てる。 A/D 変換・通信などは別章で扱っているため、ここでは簡単な接続イメージにとどめる。

Q2. センサの静特性

(1) 感度(Sensitivity)

入力変化に対する出力変化: \[ S = \frac{\Delta y}{\Delta X} \] 単位例:\(\mathrm{mV/^\circ C},\ \mathrm{\Omega/^\circ C},\ \mathrm{V/MPa}\) など。

(2) 直線性(Linearity)

出力 \(y(X)\) が「理想直線」からどれだけずれるか。
多くの場合、フルスケールに対する最大偏差 [%FS] で表現される。

(3) ヒステリシス

上昇過程と下降過程で、同じ入力 \(X\) に対して出力が異なる現象。 例:ロードセル・磁気センサなど。

(4) 分解能(Resolution)

出力の変化として識別可能な最小入力変化量。
センサ固有のノイズ+後段の ADC の分解能で決まる。

(5) ゼロ点・スパン・ドリフト

Q3. センサの動特性

(1) 一次遅れモデル

多くのセンサは、応答を一次遅れ系で近似できる: \[ \tau \frac{dy(t)}{dt} + y(t) = K X(t) \] ステップ入力 \(X(t)=X_0\) に対して、 \[ y(t) = K X_0 \left(1 - e^{-t/\tau}\right) \]

(2) 時定数・応答時間

(3) バンド幅

周波数応答で、ゲインが -3 dB となる周波数 \(\omega_c\) が一次系のカットオフ周波数。 \[ \omega_c = \frac{1}{\tau} \]

Q4. 抵抗式センサ

(1) 金属抵抗温度計(RTD:Pt100など)

抵抗値が温度にほぼ線形に比例: \[ R(T) \approx R_0 (1 + \alpha T) \] ここで \(\alpha\) は温度係数(例:Pt で約 \(0.00385/\mathrm{^\circ C}\))。

(2) サーミスタ(Thermistor)

NTC(負の温度係数): \[ R(T) = R_0 \exp\left[B\left(\frac{1}{T} - \frac{1}{T_0}\right)\right] \] 低温〜中温で高感度だが、非線形性が強い。

(3) ひずみゲージ(Strain Gauge)

抵抗変化とひずみの関係: \[ \frac{\Delta R}{R} = K \varepsilon \] \(\varepsilon\):ひずみ、\(K\):ゲージ率。

ロードセルでは、ゲージをブリッジ接続して微小差電圧を取り出す。

Q5. 電圧・電流出力型センサ

(1) 電圧出力センサ

(2) 電流出力センサ(4–20mA)

工業計測用の標準インターフェイス。

(3) 4–20mA の受け側回路(簡略)

受信側では、例えば 250 Ω の抵抗で電圧に変換: \[ V = I \times 250\ \Omega \] 4–20 mA → 1–5 V に変換でき、そのまま ADC へ。

Q6. 容量式・圧電式・光学式・磁気式センサ

(1) 容量式センサ

コンデンサの静電容量: \[ C = \varepsilon \frac{S}{d} \]

(2) 圧電式センサ(Piezo)

力・加速度 → 電荷に変換: \[ Q = d \cdot F \] 出力インピーダンスが非常に高いため、 電荷アンプ・FET 入力アンプが必要。

(3) 光学式センサ

出力電流をトランスインピーダンスアンプ(TIA)で電圧に変換: \[ V_{\mathrm{out}} = - I_{\mathrm{ph}} R_f \]

(4) 磁気式センサ

電流を流したときの電圧変化・抵抗変化で磁界を検出し、 位置・回転・電流検出などに応用される。

Q7. 化学・ガス・環境センサ(概要)

電子回路との関係が深いものだけ簡単に触れる:

(1) 電気化学式ガスセンサ

酸化還元反応で電流・電圧が発生。 電流出力をシャント抵抗+アンプで電圧化して測定。

(2) pH センサ(ガラス電極)

pH に応じた起電力が発生するが、内部抵抗が非常に高いので FET 入力の高インピーダンスアンプが必要。

(3) 湿度センサ

容量変化・抵抗変化を利用したものが多く、 AFE 回路は容量計測・抵抗計測として設計する。

Q8. センサ用 AFE(Analog Front End)の基本形

(1) ブリッジ回路+差動アンプ

ひずみゲージ・ロードセル・圧力センサなどで定番の構成:

(2) 電流ループ受信回路(4–20mA)

(3) トランスインピーダンスアンプ(光・電流センサ)

光センサなどの電流出力を電圧に変換。 \[ V_{\mathrm{out}} = - I_{\mathrm{in}} R_f \] 入力容量との組み合わせでノイズ帯域を制御する。

(4) 容量・インピーダンス測定

AC 励振をかけ、ブリッジ法やロックインアンプで微小変化を検出する手法もある。 (詳細は高級計測回路のテーマに譲る)

Q9. 校正・温度補償・実務的注意点

(1) 校正(Calibration)

(2) 温度補償

(3) ノイズ・EMC 対策

(4) 故障モードとフェイルセーフ

参考URL

 

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