物理や材料の「対称性」を記述する数学的構造が群である。 例:空間の回転対称性、結晶の格子対称性、ハミルトニアンの対称性など。
集合 \(G\) と二項演算 \(\cdot\) に対して、以下を満たすとき \((G,\cdot)\) を群という:
任意の \(a,b\in G\) に対し \[ a\cdot b = b\cdot a \] が成り立つ群を可換群(アーベル群)、成り立たない群を非可換群という。 回転群 \(SO(3)\) や結晶の空間群は一般に非可換である。
\(G\) の部分集合 \(H\) が、同じ演算に関して群になっているとき、\(H\) を部分群という。 判定の一つ:
要素 \(g\in G\) により \[ \langle g\rangle = \{\dots, g^{-2}, g^{-1}, e, g, g^2,\dots\} \] が \(G\) に等しいとき、\(G\) を巡回群と呼ぶ。
部分群 \(H \subset G\) と要素 \(g\in G\) に対し 左剰余類: \[ gH = \{gh \mid h\in H\}, \] 右剰余類: \[ Hg = \{hg \mid h\in H\}. \]
有限群 \(G\) とその部分群 \(H\) に対し \[ |G| = |G:H|\cdot|H| \] が成り立つ。ここで \(|G:H|\) は剰余類の個数。 特に、要素の位数は群の位数の約数である。
任意の \(g\in G\) に対して \[ gH = Hg \] が成り立つ部分群 \(H\) を正規部分群(\(H\triangleleft G\))と呼ぶ。
正規部分群 \(N\) があると、剰余類全体 \[ G/N = \{gN \mid g\in G\} \] に自然な群構造が入り、剰余群(商群)と呼ばれる。
群 \(G\), \(H\) の間の写像 \(\varphi:G\to H\) が \[ \varphi(ab) = \varphi(a)\varphi(b) \] を満たすとき群準同型という。
準同型 \(\varphi\) に対し \[ \ker\varphi = \{g\in G \mid \varphi(g)=e_H\}, \quad \mathrm{Im}\varphi = \varphi(G) \] を核と像と呼ぶ。核は常に正規部分群。
準同型が全単射であるとき同型と呼び、 群 \(G,H\) が「構造的に同じ」であることを意味する。
群 \(G\) が集合 \(X\) に作用するとは、写像 \[ G\times X \to X,\quad (g,x)\mapsto g\cdot x \] であって \[ e\cdot x = x,\quad (g_1 g_2)\cdot x = g_1\cdot(g_2\cdot x) \] を満たすこと。
群 \(G\) の表現とは、線形空間 \(V\) 上への群準同型 \[ D: G \to GL(V) \] である。有限次元の場合、行列表現: \[ g \mapsto D(g)\in GL(n,\mathbb{C}). \]
部分空間 \(W\subset V\) が全ての \(g\in G\) に対して \[ D(g)W \subset W \] を満たすとき不変部分空間という。非自明な不変部分空間を持たない表現を既約表現という。
多くの場合、表現は既約表現の直和に分解できる: \[ V \cong \bigoplus_\alpha n_\alpha V_\alpha \] (\(\alpha\):既約表現の種類、\(n_\alpha\):多重度)。
表現 \(D(g)\) のキャラクター(跡)を \[ \chi(g) = \mathrm{Tr}\,D(g) \] と定義する。共役な要素 \(g,hgh^{-1}\) で同じ値を取る。
既約表現のキャラクター \(\chi^{(\alpha)}\) に対して \[ \frac{1}{|G|} \sum_{g\in G} \chi^{(\alpha)}(g)^* \chi^{(\beta)}(g) = \delta_{\alpha\beta} \] が成り立つ。
ある表現 \(\chi\) が既約表現 \(\chi^{(\alpha)}\) を何回含むか(多重度 \(n_\alpha\))は \[ n_\alpha = \frac{1}{|G|} \sum_{g\in G} \chi^{(\alpha)}(g)^* \chi(g) \] で求められる。
元が連続的にパラメータでラベルされる群を Lie 群という。 単位元近傍では \[ g(\epsilon) \approx e + \epsilon_a T_a \] のように生成子 \(T_a\) で展開し、交換関係 \[ [T_a, T_b] = f_{ab}{}^{c} T_c \] を満たす Lie 代数が得られる。
3 次元回転群 \(SO(3)\) の Lie 代数は角運動量演算子 \[ [J_i, J_j] = i\hbar\,\varepsilon_{ijk} J_k \] に対応する。 量子論では \[ \mathbf{J}^2 |j,m\rangle = \hbar^2 j(j+1)|j,m\rangle, \quad J_z |j,m\rangle = \hbar m |j,m\rangle. \]
特殊ユニタリ群 SU(2) は 2×2 ユニタリ行列で \[ U^\dagger U = I,\quad \det U = 1 \] を満たすもの全体。 Lie 代数は Pauli 行列 \(\sigma_i\) を用いて \[ [\sigma_i,\sigma_j] = 2i \varepsilon_{ijk}\sigma_k. \]
SU(2) の既約表現は半整数スピンを記述し、SO(3) の「二重被覆」となる。
原点を固定する回転・反転・鏡映・回反操作の有限群。 3 次元では 32 個の結晶点群が存在し、 結晶のマクロな対称性(光学的性質・圧電性など)を決定する。
結晶の全ての対称操作(並進、ねじれ軸、映進面など)から成る群。 3 次元では 230 種類存在し、 「点群」×「格子並進」の拡張構造として理解できる。
初期状態・終状態・相互作用の表現を \[ \Gamma_i,\ \Gamma_f,\ \Gamma_{\text{op}} \] とすると、許容遷移は \[ \Gamma_i \otimes \Gamma_{\text{op}} \otimes \Gamma_f \] の中に自明表現が含まれるかどうかで判定できる。