音楽理論 コード分析
7-9. コンピング(伴奏)での実践ポイント
◆ コンピングの役割
- ソリストを支える「会話相手」
- リズムセクションの一員としてグルーヴを作る
- 和音を通じてフォーム・コードチェンジを提示する
◆ 実践的な注意点
- 常に鳴らし続けない(隙間を残す)
- ドラマーやベースのフレーズと会話する
- ソリストのリズム・モチーフを真似る or 返す
- 音量と音域に注意し、主役を邪魔しない
ボイシングの「形」だけでなく、
いつ鳴らすか(リズム)・どれくらい鳴らすか(密度)も
コンピングにおいて非常に重要な要素となる。
次の第8章では、ここまでの理論を使って
実際のスタンダード曲の進行を分析してみる。
8-2. 「Blue Bossa」のコード分析
マイナーキーが主軸のボサノヴァ曲。
マイナー II–V–I の基礎を学ぶのに最適。
◆ キー:Cマイナー
| Cm7 | Cm7 | Fm7 | Fm7 |
| Dø7 | G7 | Cm7 | Cm7 |
| E♭m7 | A♭7 | D♭△7 | D♭△7 |
| Dø7 | G7 | Cm7 | Cm7 |
◆ 分析ポイント
-
Dø7 → G7 → Cm7
→ マイナー II–V–I の基本形
-
E♭m7 → A♭7 → D♭△7
→ 短いメジャー II–V–I による “ワンポイント転調”
- G7 ではオルタード・ミクソリディアン♭6 などが効果的
-
Fm7 はサブドミナント・マイナー(IVm)
→ ブルージーな雰囲気を出す役割
1曲の中で「マイナー I」と「サブドミナント・マイナー」の
キャラクターの違いを学べるのもポイント。
8-3. 「All the Things You Are」のコード分析
スタンダードの中でも、機能と転調の流れが最も美しい名曲。
ほぼ II–V–I の “連続モジュレーション” によって構成される。
◆ 冒頭 16小節(簡略)
| Fm7 | B♭m7 | E♭7 | A♭△7 |
| A♭m7 | D♭7 | G♭△7 | G♭△7 |
| Em7 | A7 | D△7 | D△7 |
| Gm7 | C7 | F△7 | F△7 |
◆ 分析ポイント
-
Fm7 → B♭m7 → E♭7 → A♭△7
→ A♭メジャーへの II–V–I
-
A♭m7 → D♭7 → G♭△7
→ G♭メジャーへの II–V–I
-
Em7 → A7 → D△7
→ Dメジャーへの II–V–I(転調)
-
Gm7 → C7 → F△7
→ Fメジャーの II–V–I(さらに転調)
「II–V–I が環状につながりながら転調していく」構造であり、
ジャズ曲では最も美しいハーモニーの一つとされる。
この曲を理解することは、
「キーの概念を相対的に捉える」訓練になる。
8-4. Rhythm Changes(リズムチェンジ)の分析
ビバップの重要曲の 40% 以上が、この
「Rhythm Changes」進行をベースにしていると言われる。
◆ B♭キーの典型的 Aセクション
| B♭△7 | G7 | Cm7 | F7 |
| B♭△7 | G7 | Cm7 | F7 |
◆ 分析ポイント
-
B♭△7 → G7 → Cm7 → F7
→ トニック → セカンダリーV → II → V
-
機能的には:
T → D(V/II) → S → D
-
ビバップでは、この中に
パッシングディミニッシュ・トライトーン代理・I–VI–II–V
を次々に入れて高速で展開する
Rhythm Changes を理解すると、
バップ語法の核がわかってくる。
8-5. 曲分析の共通フレーム(T/S/Dで見る)
曲を分析するときは、全部を丸暗記する必要はない。
必要なのは、機能ごとの輪郭をとらえること。
◆ 分析の大原則
-
トニック(T)の中心は何か?
→ どのキーにいるかを決定
-
サブドミナント(S)はどこか?
→ II、IV、IIm7♭5 の位置
-
ドミナント(D)はどれか?
→ V7、♭II7、セカンダリーV
-
II–V–I の塊を探す
→ つながりを重視する
T / S / D で分解できれば、
曲全体の「骨組み」がそのまま見えるようになる。
8-6. 分析後の練習法(実戦的アプローチ)
分析はあくまでスタート地点。
実戦では、次のような練習をするとアドリブとコンピングが急に良くなる。
◆ アドリブ向け
- 曲の II–V–I をすべて抽出し、個別にスケール練習
- ガイドトーンのみで 1コーラス吹く
- ターゲットノート(3rd, 7th)着地を全キーで
- コンディミ / オルタードを V7 で試す
◆ コンピング向け
- 各小節の「最低限必要な音」(3rdと7th)を抽出して弾く
- ルートレス・ボイシングを1コーラスで
- 共同演者のモチーフを模倣する
- コード進行を T/S/D で分類する
分析 → ボイシング → ライン作り
という流れを 1曲ごとに行うと、
理論と実戦が自然に融合する。