半導体デバイス物理は、半導体中のキャリア(電子・正孔)のふるまいを理解し、 p-n 接合・ダイオード・バイポーラトランジスタ・MOSFET などの デバイス動作原理を物理的に説明する学問である。
半導体では価電子帯 (valence band) と伝導帯 (conduction band) があり、 その間にバンドギャップ \(E_g\) がある。
有効状態密度 \(N_c, N_v\) を用いると、 熱平衡での電子・正孔濃度は \[ n_0 = N_c \exp\left(-\frac{E_c - E_F}{k_B T}\right), \quad p_0 = N_v \exp\left(-\frac{E_F - E_v}{k_B T}\right). \]
ドーピングのない真性半導体では \[ n_i = p_i = \sqrt{N_c N_v} \exp\left(-\frac{E_g}{2k_B T}\right). \]
n 型ドーピング(ドナー濃度 \(N_D\))、p 型ドーピング(アクセプタ濃度 \(N_A\))に対して、 熱平衡では \[ np = n_i^2 \] (マスアクションの法則)が成り立ち、 電気的中性条件を満たすように \(n_0, p_0\) が決まる。
電場 \(\mathbf{E}\) によるキャリアの平均速度をドリフト速度 \(\mathbf{v}_d = \mu \mathbf{E}\) とすると、 電流密度は \[ \mathbf{J}_n^{\text{drift}} = q n \mu_n \mathbf{E}, \quad \mathbf{J}_p^{\text{drift}} = q p \mu_p \mathbf{E}. \]
濃度勾配による拡散: \[ \mathbf{J}_n^{\text{diff}} = q D_n \nabla n, \quad \mathbf{J}_p^{\text{diff}} = -q D_p \nabla p. \]
ドリフトと拡散は \[ D = \mu \frac{k_B T}{q} \] で結びつく(アインシュタインの関係)。
電荷保存により、電子について \[ \frac{\partial n}{\partial t} = \frac{1}{q}\nabla\cdot \mathbf{J}_n + G_n - R_n, \] 正孔についても同様。 \(G\):生成率、\(R\):再結合率。
p 型領域と n 型領域を接合すると、拡散によりキャリアが再結合し、 移動しないイオン化ドナー・アクセプタが残って空乏層が形成される。
平衡状態での内蔵電位 \(V_{\mathrm{bi}}\) は \[ V_{\mathrm{bi}} = \frac{k_B T}{q} \ln\frac{N_A N_D}{n_i^2}. \]
一様ドーピングの abrupt p-n 接合で、空乏層幅 \(W\) は \[ W = \sqrt{ \frac{2\varepsilon_s}{q} \frac{N_A+N_D}{N_A N_D} (V_{\mathrm{bi}} - V) }, \] \(V\):外部バイアス(順方向 V>0、逆方向 V<0)。
順バイアス \(V > 0\) により障壁が \((V_{\mathrm{bi}} - V)\) に低下し、 少数キャリアの注入が増加する。
理想ダイオードでは \[ I = I_s \left( e^{\frac{qV}{n k_B T}} - 1 \right), \] \(n\):理想性因子(理想は 1)、 \(I_s\):逆方向飽和電流。
逆バイアスでは電流はほぼ \(-I_s\) で一定だが、 強い電場によりブレークダウン(ツェナー、アバランシェ)が生じうる。
npn / pnp 構造:
npn トランジスタの能動領域:
エミッタからベースへ注入された電子が、 再結合せずにコレクタへ到達する割合が高いとき、 \[ I_C \approx \beta I_B, \] で電流増幅が得られる(\(\beta\):電流増幅率)。
Metal–Oxide–Semiconductor 構造: 金属ゲート / 絶縁膜(SiO2 等) / 半導体 (Si)。
ゲート電圧 \(V_G = V_{\mathrm{FB}}\) で表面ポテンシャルが 0 となる。 仕事関数差や固定電荷に依存。
強反転が起こる電圧: \[ V_{\mathrm{th}} = V_{\mathrm{FB}} + 2\phi_F + \frac{\sqrt{2\varepsilon_s q N_A 2\phi_F}}{C_{\mathrm{ox}}}, \] (p 型基板 NMOS の例) \(\phi_F\):フェルミポテンシャル、 \(C_{\mathrm{ox}}\):酸化膜容量/面積。
2 次元効果・短チャネル効果を無視した理想 MOSFET:
\[ V_{DS} < V_{GS} - V_{\mathrm{th}} \] のとき、 \[ I_D \approx \mu_n C_{\mathrm{ox}} \frac{W}{L} \left[ (V_{GS}-V_{\mathrm{th}})V_{DS} - \frac{V_{DS}^2}{2} \right]. \]
\[ V_{DS} \ge V_{GS} - V_{\mathrm{th}} \] のときチャネルピンチオフが生じ、 \[ I_D \approx \frac{1}{2}\mu_n C_{\mathrm{ox}} \frac{W}{L}(V_{GS}-V_{\mathrm{th}})^2. \]
\(V_{GS} < V_{\mathrm{th}}\) でも指数関数的に電流が流れ、 \[ I_D \propto \exp\left(\frac{q V_{GS}}{n k_B T}\right), \] ここで \(n\):サブスレッショルド係数。
格子欠陥や不純物準位を介した再結合: 有効寿命 \(\tau_n, \tau_p\) により記述。
少数キャリア寿命はダイオード・BJT の速度・リーク電流に直接影響する。
MOSFET の寸法・電圧をスケールダウンすることで高速化・集積度向上を図る。 ただし、電界強度やリーク電流、信頼性の問題が顕在化する。