超伝導体は、臨界温度 \(T_c\) 以下で電気抵抗が実質的にゼロとなり、 一度流した電流が減衰せずに流れ続ける。
超伝導状態では、内部磁束密度 \(\mathbf{B}\) が完全に排除される (完全反磁性): \[ \mathbf{B} = 0 \quad (\text{理想的超伝導体内部}). \] これは単なる完全導体とは異なる本質的な特徴であり、 超伝導相が「秩序状態」であることを示す。
超伝導電流密度 \(\mathbf{J}_s\) とベクトルポテンシャル \(\mathbf{A}\) の間に \[ \mathbf{J}_s = -\frac{n_s e^2}{m}\mathbf{A} \] の関係を仮定する(第2ロンドン方程式)。
Maxwell 方程式と組み合わせると \[ \nabla^2 \mathbf{B} = \frac{1}{\lambda_L^2}\mathbf{B}, \quad \lambda_L^2 = \frac{m}{\mu_0 n_s e^2}. \] 磁場は表面から \[ B(x) \propto e^{-x/\lambda_L} \] のように指数関数的に減衰する。
ロンドン理論は「秩序パラメータ」を明示的に持たず、 超伝導相転移やエネルギーギャップを扱えないが、 マイスナー効果と反磁性の理解に重要。
GL 理論では、超伝導状態を表す複素スカラー場 \[ \psi(\mathbf{r}) \] を導入し、その絶対値の二乗 \(|\psi|^2\) が超伝導電子密度 \(n_s\) に対応するとみなす。
電磁場との結合を含む自由エネルギー: \[ \mathcal{F}[\psi,\mathbf{A}] = \int d^3r\, \left[ \alpha |\psi|^2 + \frac{\beta}{2}|\psi|^4 + \frac{1}{2m^*} \left| \left( -i\hbar\nabla - 2e\,\mathbf{A} \right)\psi \right|^2 + \frac{|\mathbf{B}|^2}{2\mu_0} \right]. \] \(\alpha,\beta\) は温度依存パラメータ(通常 \(\beta>0\)、\(\alpha\sim\alpha_0(T-T_c)\))。
\(\psi\) と \(\mathbf{A}\) に関して極小条件をとると、
第1 GL 方程式: \[ \alpha\psi + \beta|\psi|^2\psi + \frac{1}{2m^*} \left( -i\hbar\nabla - 2e\,\mathbf{A} \right)^2\psi = 0, \]
第2 GL 方程式: \[ \mathbf{J}_s = \frac{2e\hbar}{m^*} \text{Im}\left( \psi^* \nabla \psi \right) - \frac{4e^2}{m^*}|\psi|^2\mathbf{A}. \]
これがロンドン方程式の発展形となる。
秩序パラメータが空間的に変化する典型的な長さ: \[ \xi(T) = \sqrt{\frac{\hbar^2}{2m^*|\alpha(T)|}}. \]
GL 理論では \[ \lambda(T) = \sqrt{ \frac{m^*}{4\mu_0 e^2 |\psi_0|^2} }, \] \(\psi_0\):一様系での秩序パラメータ。
\[ \kappa = \frac{\lambda}{\xi}. \] これにより超伝導体の型が分類される:
型 II 超伝導体では、磁場が \[ \Phi_0 = \frac{h}{2e} \] の単位で量子化された磁束渦(vortex)として侵入し、 Abrikosov 格子を形成する。
フェルミ面近傍の 2 電子が、格子振動(フォノン)を媒介として有効引力を感じるとき、 反対運動量・反対スピン \((\mathbf{k}\uparrow, -\mathbf{k}\downarrow)\) の クーパー対 を形成する。
基底状態は運動量空間で \[ |\text{BCS}\rangle = \prod_{\mathbf{k}} (u_{\mathbf{k}} + v_{\mathbf{k}} c^\dagger_{\mathbf{k}\uparrow} c^\dagger_{-\mathbf{k}\downarrow}) |0\rangle, \] という「対凝縮」状態。
有効相互作用 \(V\) を持つ定数相互作用モデルでは、 ギャップ \(\Delta\) は \[ \Delta = -\sum_{\mathbf{k}'} V_{\mathbf{k}\mathbf{k}'} \langle c_{-\mathbf{k}'\downarrow} c_{\mathbf{k}'\uparrow} \rangle \] を満たし、自己無撞着に決まる。
フェルミ面近傍 \(|\xi_{\mathbf{k}}| < \hbar\omega_D\) で一様な有効引力 \(-V\) が働くと仮定すると、 ギャップ方程式は \[ 1 = V N(0) \int_0^{\hbar\omega_D} \frac{d\xi}{\sqrt{\xi^2 + \Delta^2}} \tanh\left( \frac{\sqrt{\xi^2+\Delta^2}}{2k_B T} \right) \] となる(\(N(0)\):フェルミ準位での状態密度)。
\(T=0\) では近似的に \[ \Delta(0) \approx 2\hbar\omega_D e^{-1/N(0)V}. \]
\(\Delta\to 0\) の極限で求めると \[ k_B T_c \approx 1.14\,\hbar\omega_D e^{-1/N(0)V}. \]
BCS 理論の特徴的予言: \[ \frac{2\Delta(0)}{k_B T_c} \approx 3.53. \]
BCS 有効ハミルトニアンは \[ H_{\text{BCS}} = \sum_{\mathbf{k},\sigma} \xi_{\mathbf{k}} c^\dagger_{\mathbf{k}\sigma} c_{\mathbf{k}\sigma} - \sum_{\mathbf{k}} \left( \Delta c^\dagger_{\mathbf{k}\uparrow} c^\dagger_{-\mathbf{k}\downarrow} + \Delta^* c_{-\mathbf{k}\downarrow} c_{\mathbf{k}\uparrow} \right) + \frac{|\Delta|^2}{V} \] と書ける(ここでは簡約形)。
新しい演算子 \[ \gamma_{\mathbf{k}\uparrow} = u_{\mathbf{k}} c_{\mathbf{k}\uparrow} - v_{\mathbf{k}} c^\dagger_{-\mathbf{k}\downarrow}, \quad \gamma_{-\mathbf{k}\downarrow} = u_{\mathbf{k}} c_{-\mathbf{k}\downarrow} + v_{\mathbf{k}} c^\dagger_{\mathbf{k}\uparrow} \] を導入すると、ハミルトニアンは対角化される。
準粒子のエネルギーは \[ E_{\mathbf{k}} = \sqrt{\xi_{\mathbf{k}}^2 + |\Delta|^2}, \] となり、フェルミ準位周りにギャップ \(2\Delta\) が開く。
Bogoliubov 準粒子は、「電子」と「正孔」の線形結合であり、 超伝導状態における励起の自然な記述となる。
Gor'kov らにより、BCS 理論から出発し、 フェルミ準位近傍の低エネルギーモードを積分していくことで、 GL 自由エネルギーが導かれることが示された。
BCS 理論から GL パラメータ \(\alpha,\beta,m^*\) や \(\xi,\lambda\) を計算できる。 例えば \(T\) が \(T_c\) に近いとき、 \[ \alpha(T) \propto T - T_c. \]
GL 理論は、長波長・低エネルギー自由度(秩序パラメータ)だけを残した 有効場の理論とみなせる。 同様の考え方は、他の相転移(強磁性・超流動・超固体など)にも広く適用される。
秩序パラメータ \(\psi = |\psi| e^{i\theta}\) が有限値を持つとき、 グローバルな位相変換 \(\psi \to e^{i\phi}\psi\) の対称性が自発的に破れる。
電磁場との結合を考えると、位相揺らぎモード(Goldstone モード)は 光子と混ざり合い、光子が質量を獲得したようにふるまう (超伝導体内での磁場の指数減衰)。 これは素粒子物理における Higgs 機構の原型の一つとみなされる。