スピントロニクス

1. スピントロニクスとは:スピンを用いた電子工学

スピントロニクス(Spintronics)とは、電子の電荷だけでなく スピン角運動量磁気モーメントの自由度を積極的に利用する 新しい電子工学の分野である。

“電子スピンを操作して情報処理を行う”ことが基本原理である。

2. 巨大磁気抵抗(GMR):スピントロニクスの原点

(1) 構造

FM / NM / FM の多層膜で、磁化の平行(P)、反平行(AP)で抵抗が変わる。

(2) スピン分裂

強磁性体ではスピン ↑ と ↓ の状態密度が異なり、抵抗がスピン依存となる。

(3) GMR の式

\[ \mathrm{GMR} = \frac{R_{\mathrm{AP}} - R_{\mathrm{P}}}{R_{\mathrm{P}}}. \]

(4) 応用

3. トンネル磁気抵抗(TMR)と磁気トンネル接合(MTJ)

(1) MTJ 構造

FM / I / FM で、電子は絶縁体をトンネルで透過する。

(2) Julliere モデル

\[ \mathrm{TMR} = \frac{R_{\mathrm{AP}} - R_{\mathrm{P}}}{R_{\mathrm{P}}} = \frac{2P_1 P_2}{1 - P_1 P_2}. \]

(3) MgO での超高 TMR

対称性選択により 300% 以上の TMR が得られる。

(4) 応用

4. スピン流:電荷とは独立した流れ

(1) スピン流の定義

スピン流 \(\overrightarrow{J}_s\) は、スピン角運動量の流れ: 電荷流と独立に存在できる。

(2) スピン蓄積

FM → NM にスピン注入すると、 \[ \Delta\mu = \mu_{\uparrow} - \mu_{\downarrow} \] の化学ポテンシャル差が生じる。

(3) スピン拡散長

スピン不均衡が保たれる距離: \[ \lambda_{\mathrm{sf}} = \sqrt{D \tau_{\mathrm{sf}}}. \]

5. スピンホール効果(SHE)・逆スピンホール効果(ISHE)

(1) スピンホール効果

強スピン軌道金属(Pt, W など)で電流に垂直な方向へスピンが偏極して流れる。

(2) 逆スピンホール効果

スピン流から電荷流が生じる: \[ \overrightarrow{J}_c = \theta_{\mathrm{SH}} \frac{2e}{\hbar}\, \overrightarrow{J}_s \times \overrightarrow{\sigma}. \]

(3) 応用

6. スピン軌道相互作用(SOI)と Rashba 効果

(1) スピン軌道相互作用

\[ H_{\mathrm{SO}} = \lambda\,(\overrightarrow{L}\cdot\overrightarrow{S}). \]

(2) Rashba 効果

構造反転対称性破れで、 \[ H_R = \alpha_R\,(\overrightarrow{k}\times\hat{z})\cdot\overrightarrow{\sigma}. \]

(3) 応用

7. スピントルク:STT と SOT

(1) スピン移行トルク(STT)

\[ \overrightarrow{\tau}_{\mathrm{STT}} \propto \overrightarrow{m} \times \overrightarrow{p}. \]

(2) スピン軌道トルク(SOT)

\[ \overrightarrow{\tau}_{\mathrm{SOT}} = \tau_{\mathrm{DL}}\, \overrightarrow{m} \times (\overrightarrow{\sigma}\times\overrightarrow{m}) + \tau_{\mathrm{FL}}\, \overrightarrow{m} \times \overrightarrow{\sigma}. \]

(3) 応用

8. トポロジカル材料とスピントロニクス

(1) 2D Dirac 電子

\[ E(\overrightarrow{k}) = \pm \hbar v_F |\overrightarrow{k}|. \]

(2) スキルミオンのトポロジカル電荷

\[ N_{\mathrm{sk}} = \frac{1}{4\pi} \int \overrightarrow{m} \cdot \left( \frac{\partial\overrightarrow{m}}{\partial x} \times \frac{\partial\overrightarrow{m}}{\partial y} \right) dxdy. \]

9. スピントロニクスの主要応用

10. まとめ:スピントロニクスのエッセンス

参考URL

 

🔝物理 目次に戻る