熱力学第3法則より、温度 \(T \to 0\) において エントロピー \(S \to 0\)(または定数)となる。 したがって比熱 \(C = T(\partial S/\partial T)\) は \[ \lim_{T\to 0} C = 0 \] となる。
金属固体の低温比熱は \[ C(T) \approx \gamma T + \beta T^3, \] という形をとる。
自由フェルミ気体(電子系など)の内部エネルギーは フェルミ温度 \(T_F\) に対して \[ U(T) \approx U(0) + \frac{\pi^2}{6} N k_B^2 \frac{T^2}{\varepsilon_F}, \] となり、比熱は \[ C_V = \left(\frac{\partial U}{\partial T}\right)_V \propto T \] となる。
ヘリウム4(\(^4\mathrm{He}\))はボース粒子であり、 \(T \approx 2.17\,\mathrm{K}\) の \(\lambda\) 点以下で 超流動状態(He II)となる。 これは「マクロなボース凝縮」の一種と理解される。
超流動 He-4 は、密度 \(\rho\) のうち \[ \rho = \rho_s + \rho_n \] として、
の 2 成分からなるとみなされる(二流体模型)。
二流体模型では、通常の圧力波(第一音波)に加え、 温度波に対応する第二音波が存在する。 第二音波は超流動成分と常流動成分の相対運動として理解される。
ヘリウム3(\(^3\mathrm{He}\))はフェルミ粒子であり、 非常に低い温度(mK 領域)でクーパー対を形成して フェルミ超流動となる(スピン三重項・p 波ペアリング)。
電子は格子振動(フォノン)を介して有効な引力相互作用を受け、 逆運動量・逆スピンのクーパー対を形成する。 エネルギースペクトルにはギャップ \(\Delta\) が生じ、 \[ E(k) = \sqrt{(\varepsilon_k - \mu)^2 + \Delta^2} \] と書ける。
超伝導転移温度 \(T_c\) 以下で、比熱は \[ C_s(T) \propto \exp\left(-\frac{\Delta}{k_B T}\right) \] のように急激に減少する(s 波一様ギャップの場合)。 転移点では比熱の不連続(ジャンプ)が見られる。
超伝導状態では電子の散乱が減少する一方、 ギャップにより低エネルギー励起が減るため、 電子熱伝導率・フォノン熱伝導率が温度に対して特徴的な振る舞いを示す。
半導体ヘテロ構造や量子井戸構造では、 低温でキャリアが 2 次元面に閉じ込められた 2 次元電子ガス(2DEG)が実現する。
強磁場 \(\mathbf{B}\) 中の 2 次元電子のエネルギー準位は Landau 準位 \[ E_n = \hbar\omega_c \left(n + \frac{1}{2}\right),\quad \omega_c = \frac{eB}{m^*} \] に量子化される(\(m^*\):有効質量)。
低温・強磁場下でのホール抵抗は \[ R_{xy} = \frac{h}{\nu e^2}, \] \(\nu\):充填因子(整数または分数) の台形状のプラトーを示す。
これらの現象は、低温での電子状態の量子化と散乱抑制により実現する。
金属中に微量の磁性不純物が含まれると、 抵抗率 \(\rho(T)\) が低温で一度下がったのち、 ある温度以下で再び増大し、\(-\log T\) 的な振る舞いを示す。
伝導電子のスピン \(\mathbf{s}\) と 不純物スピン \(\mathbf{S}\) との交換相互作用 \[ H_K = J\,\mathbf{s}(0)\cdot\mathbf{S} \] により、スピンフリップ散乱が強まる。
レナーマル化群的には、スケールを下げると 有効結合 \(J_{\text{eff}}(T)\) が増大し、 特徴的なスケール \(T_K\)(Kondo 温度)で 強結合状態へ流れる。
Kondo 格子・重い電子系では、多数の局在スピンと 伝導電子の相互作用により、巨大な有効質量や 異常な低温物性が現れる。
抵抗率 \(\rho(T)\) は主に \[ \rho(T) = \rho_0 + \rho_{\text{ph}}(T) + \rho_{\text{mag}}(T) + \cdots \] と分解される。
\(T \ll \Theta_D\)(Debye 温度)では 格子振動が凍結し、電子–フォノン散乱が急減するため、 \(\rho_{\text{ph}}(T)\) は急速に小さくなる。
金属の低温極限では、 \[ \frac{\lambda}{\sigma T} \to L_0 = \frac{\pi^2}{3}\left(\frac{k_B}{e}\right)^2 \] (Wiedemann–Franz 則)が成り立つが、 強相関系・超伝導状態などではこれが破れることがある。
実験データ \(C(T)\) を \[ \frac{C}{T} = \gamma + \beta T^2 \] にフィットすると、縦軸 \(C/T\)–横軸 \(T^2\) の直線の 切片から \(\gamma\)、傾きから \(\beta\) を得ることができる。
温度を掃引して比熱を測ると、 超伝導転移温度で比熱のジャンプ \(\Delta C\) が観測される。 \[ \frac{\Delta C}{\gamma T_c} \approx 1.43 \] は単純な BCS 超伝導の指標として知られている。
低温での熱伝導率 \(\lambda(T)\) 測定により、 電子・フォノン・マグノンの散乱機構やギャップ構造 (超伝導ギャップの節・ノードなど)を調べることができる。
nm〜µm スケールの半導体ナノ構造では、 キャリアの空間閉じ込めによりエネルギー準位が離散化し、 「人工原子」として振る舞う(量子ドット)。
低温で熱揺らぎ \(k_B T\) がクーロンエネルギー \(E_C = e^2/2C\) より小さいと、 電子の出入りが抑制されるクーロンブロッケードが起こる。 ゲート電圧を掃引すると、単一電子ずつ電流が流れるピーク構造が現れる。
メゾスコピックリングで電子の位相干渉が保存されると、 磁束量子 \(\Phi_0 = h/e\) に対応した抵抗振動 (Aharonov–Bohm 振動)が観測される。 これも低温で散乱・位相緩和が抑えられるからこそ見える現象である。